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中森健之 学位:博士(理学)
 Takeshi Nakamori, Ph.D.

Office : 理学部4号館C307
E-mail : nakamori@sci.kj.yamagata-u.ac.jp
TEL : +81-23-628-4633

研究室配属前の学生さんへ

3年前期終了時の研究室配属希望を決める際に助けとなることを目指したページです。 高エネルギー宇宙研究グループや実験系グループのウェブサイトが整備・保守できてないので、 私の研究室についてのみここで記載します。 大学院進学先の検討にも一部は役立つと思います。
私の研究室に限らない一般論ですが、 いざ入ってから「なんだか思っていたのと違う」「こんなはずじゃなかった」となるのは不幸なことです。 研究室配属の希望調査は、研究分野のことをまだまだ知らない段階で巡ってくるので、 誰もが判断に迷うことと思います。 理学部にはオープンラボやラボ探検など、様々な機会がありますので、 ぜひいろいろな研究室を回ってみましょう。 そして先輩や教員に質問してみると、 それぞれ違う視点からの話が聞けることでしょう。
余談ですが、学部の研究室配属には定員上限が設けられるため、 希望と違う研究室に配属されることもあります。 そのような場合、 大学院進学時に研究室を変えることができることも気に留めて置くと良いでしょう。 希望通り行かなくても、単に知らなかっただけで やってみると面白かった、なんてこともあったりします。 あまり深刻に考えすぎないことをお勧めします。

何を研究しているの?

ここでは大まかな話にとどめ、詳細は別のページを用意する予定です。 それまでもその後でも、聞きに来て貰えればいくらでもお話します。 なんだか一見バラバラなことをやっているように見えますが、 放射線と微弱光の計測という共通技術の応用研究です。 特に、MPPC(またはSiPM)と呼ばれる半導体光センサを使って、 天体観測装置や放射線検出器を開発しています。 理学的な興味から物理に基づいて装置を設計し、作ったら観測や計測を行う実験系の研究室です。

ガンマ線天体観測と宇宙線起源の探求

cta south
1012 eV(テラ電子ボルト、TeV)ものエネルギーを持つ 超高エネルギーガンマ線を放出する天体を観測します。 地球上では実現できない極限環境と激しく活動する天体現象を調べ、 宇宙線の起源に迫ります。 大気チェレンコフ望遠鏡と呼ばれる装置を何台も並べて観測することで、 精度良くガンマ線の到来方向やエネルギーを計測することができます。
CTA-South
上の図は チェレンコフ・テレスコープ・アレイ(Cherenkov Telescope Array; CTA)という、 現在も開発・建設中の超高エネルギーガンマ線天文台の完成想像図です。 北半球はカナリア諸島、南半球はアタカマ砂漠に合計100台を超える望遠鏡を設置する計画で、 このような大きなプロジェクトは国際協力で初めて実現できます。 CTAは30カ国以上1300人を超える研究者・技術者で構成され、 日本もCTA Japanとして参画し、重要な役割を果たしています。 私達もその一員として、 学生さんを中心に大口径望遠鏡のカメラ用電子回路"Dragon"の開発で貢献しました。 完成したDragon基板には、京都大学とともに山形大学の名前が刻印されました。 右の写真はカナリア諸島に建設されたCTA大口径望遠鏡の1号機で、焦点面カメラの中にDragonが搭載されています。
Young SNR RX J1713
F. Acero et al.
宇宙線を生成する天体の観測的研究を続けています。 私達が住む天の川銀河の中にも 超新星残骸やパルサー星雲、マイクロクェーサーなど 宇宙線を加速する多種多様な天体が存在しています。 宇宙線が存在する天体は、電磁気学や素粒子物理学が教える過程によりガンマ線を放出します。 右の図は宇宙線を作っていると考えられている若い超新星残骸のシミュレーション画像で、 CTAがガンマ線を観測するとこのような画像が偉えると期待されます。 画像分析だけでなくエネルギー分布や他の波長データとの比較など 様々な手段を講じ、天体や宇宙線の様子を物理学に基づいて想像します。 そして、地球近傍で観測されている宇宙線はどこでどのように生まれ、 どのようにして地球に到達するのかという問いに挑戦しています。
長年稼働中の大気チェレンコフ望遠鏡 MAGICMAGIC Japan) のチームメンバーであり、 109 eV(ギガ電子ボルト;GeV)のガンマ線を観測する フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡 LATチーム(日本LATチーム) のメンバーでもあります。観測され公開された(あるいはチーム内で共有された)データは 言わば世界中の研究者と取り合いで競争ですが、国内外の研究者と協力して研究を進めることがほとんどです。
 

中性子星の高速可視光観測

Crab pulsar
NASA/HST/CXC/J. Hester
独自に開発中の半導体光センサを使って、 中性子星「かにパルサー」を観測しています。 かにパルサーは108テスラもの表面磁場を持つ強力な磁石のような天体で、 毎秒30回という速度で自転しながらビーム状の放射を出していると考えられています。 右の画像はかにパルサーとその周囲を取り囲むかに星雲で、ドーナツ型の星雲の中心にパルサーが見えます。 かにパルサーは突発的に強烈な電波を放出する現象が頻繁に起こっていることが知られています。 巨大電波パルスと呼ばれるこの現象は、ナノ秒からマイクロ秒というほんの一瞬だけ電波が増光します。 その発生機構は長年謎のままで、様々な波長で同時に観測することが重要な手がかりになると考えています。 そこで、我々が開発した可視光の光子を1つ1つ検出できるセンサを使えば、 巨大電波パルスが起こる一瞬の間の可視光光度の変動を精密に測定することができるはずです。
Optical pulsar observation
右の写真は理学部屋上の天文台で観測を行った時の様子です。 学生さんが回路基板を作ったり、データ解析プログラムを書いたりして観測を成功させました。 開発したシステムを広島大学の「かなた」望遠鏡に搭載した観測実験や、 東北大学の電波望遠鏡などと同時観測を行った実績もあります。 システムの小型化と安定性向上のための改良開発や、他の天体の観測研究の検討も進めています。 この観測システムは我々独自のもので、 CTAなどと比べると小さな小さな研究グループです。 だからこそ一人一人が研究プロジェクト全体を把握しやすいと言えますし、 また逆に細部まで理解して欲しいとも思います。

核医学用検出器の開発

がんやアルツハイマーの診断装置である陽電子断層撮像 (Positron Emission Tomography; PET)に使う検出器システムを開発しています。 PET検査ではベータプラス崩壊する同位元素を含み病巣に集積する薬剤を患者に投入し、 放出された陽電子が体内の電子と対消滅して発生する1対のガンマ線を検出して発生源を特定します。 診断画像の質を改善すためには対消滅ガンマ線の飛行時間差を精密に測定することが有効です。 そのために、ナノ秒の速い応答速度持つプラスチックシンチレータを利用します。
PET DAQ
プラスチックシンチレータは原子番号が小さく、消滅ガンマ線はコンプトン散乱しか起こさないため、 散乱ガンマ線を吸収する無機シンチレータとともに構成します。 散乱・吸収の反応位置とエネルギーを測定すると、コンプトン散乱の運動学により ペアのガンマ線が反応を起こすべき位置の範囲が制限できます。 この原理で偶発同時計数を排除すれば、診断画像の質が向上することが期待できます。 このようなコンセプトのプロトタイプ機の開発や、 画像再構成ソフトウェアの開発を行っています。 右の写真は企業と共同で開発したデータ収集システムで、当時の大学院生がほとんど1人で立ち上げました。 ガンマ線の反応位置とエネルギー、そして飛行時間差を10-9秒以下の精度で計測します。
MLEM image
T. Nishihara
記録された大量のデータからガンマ線画像を再構成し、サブミリの精度で発生源を特定することを目指します。 右図は、「最初の一歩」として、従来型PETセンサを模擬したシミュレーションデータからガンマ線画像を再構成した卒業研究の例です。 強度の異なる2つのガンマ線源の位置を特定できることだけでなく、それらの強度比まで測定できることが分かりました。

入ったら何をやるの?何が身につくの?

具体的に取り組むことは、個々のプロジェクト全体の進展状況によって変わります。 あるいはタイミングによっては、新しいテーマが突発的に立ち上がることもあります。 以下に挙げたキーワードのいくつかに携わることになるでしょう。 実験系のテーマだと、ものを設計して作り、動かして評価するサイクルになります。 計算機に向かいっぱなしになるテーマだとコンピュータとその周辺スキルが伸びやすいでしょう。 特別に必要な前知識はありません。 強いて言うなら、コンピュータの操作やキーボード入力に慣れていることでしょうか。 スマホで私達の研究はできません(できるようにスマホアプリを開発する!という提案は大歓迎) 宇宙物理学は学部で学習する物理学が総出演するオールスターのような応用分野なので、 研究しながら勉強を常時並行することになります。 学習効果を上げるためには、講義や演習・実験を通じで土台を固めておくことが重要です。。

指導方針は?

何よりも研究を楽しめることを願っていて、個性に合わせた指導ができるよう試行錯誤を続けています。 右も左もわからない最初は身につけることが多く大変ですが、 ある程度わかってきて自分なりの面白いポイントが見つかると、自然と研究を前に進めたくなって欲しいと願っています。 そんな研究との出会いの場を提供できるよう努めます。
卒業後の人生の基盤となるものを身に付けて欲しいとか、 他の大学・研究機関の研究者や学生さんと交流して欲しいとか、 打ち合わせやセミナーで質問できるようになって欲しいとか、 語りだすと長くなるあれこれを抱えて指導に望んでいます。 大半のみなさんは研究者にはならないし、目指していないと思います。 なのになぜ「研究」をしないといけないのか?という問いに対して、 自分なりの答えを見つけられるようになってもらいたいです。 漠然としててうまく伝わない気がしますね。この段落は要推敲。
うまくいきそうだと思う道筋を示して、目標到達点を定めることを理想としています。 しかしながら研究というものの性質上、思うように行かなかったり状況が変わって方針転換することがあります。 卒業研究は「うまく行かなかった」ことを理由に評価は下がりませんので、その点だけは安心して下さい。
あなたの卒業研究は教員や先輩の研究の「お手伝い」ではありません。教員や先輩に助けてもらうことはあっても、みなさん一人一人に任されたテーマです。プロジェクトの大きな枠組み中で自分の研究はどういう位置づけなのか、どういう意義があるのかを意識して下さい。ほとんどの研究は一人ではできませんので、研究室という集団をうまく利用して下さい。一人一人のテーマは異なっても、共通するノウハウや技術を持っていたり、外から目線で役に立つヒントが転がり出てくることもありえます。いろいろな人と研究の話を日常的にしてほしいです。
 卒業研究はサークルや部活とは違い正規のカリキュラムですので、気が向いたときだけふらっと研究室に来るようなサイクルは問題があります。平日昼間からアルバイト三昧も困ります(もちろん経済的な問題など、事情がある場合はその限りではありません。キャンパス内の生協でアルバイトして終わったら研究室に戻る、という先輩もいました。)個人に合わせて進め方を相談します。
週に1回のミーティングで進捗報告をしてもらいますが、プレゼン(というと大げさですが)の練習という面にも重心を置いています。 現実問題として週に1回では状況の共有頻度が低すぎるため、もっと頻繁に進捗や詰まっていることは相談して下さい。 学生部屋にもしょっちゅう顔を出してダベりに行っています。

就職先は?大学院行ったほうが良い?

学部新卒の場合は就職活動時にほとんど研究が始まっていないこともあり、 卒研の分野や内容は採用にあまり影響しないと予想されます。 一方で大学院卒になると、専門性を生かした就職になりやすくなります。 これまでの進路実績を列挙すると以下のようになります。 いずれも学生さん一人一人が努力した成果であり私が直接影響したわけではありませんが、 大学院生は研究活動を説明したりアピールする機会があるでしょうから、 研究を通じて間接的に影響がある、ぐらいは言っても怒られないですかね。
ガンマ線天文学をテーマに希望する学生さんには、原則として大学院に進学することを強く勧めています。学部生のうちは国際チームの正規メンバーとして認められないため、アクセスできる情報が限られるなどの不自由が多いからです。別のテーマで卒業研究をやって、院生になってから切り替えるという道も実績があります。

発表論文や研究資金の実績は?

研究業績はresearch mapというサイトに集約されています。教員を厳しくチェックしたい人は見に行って下さい。研究資金が確保されているかは、大学院を検討する上では重要な判断要素の1つとなりえます。

社会貢献?

社会貢献というとなんだか偉そうですが、研究等を通じて身につけた科学的な知識や技術を多くの人に知ってもらいたい、我々と同じように楽しんでもらいたい、そして一緒に楽しみたいというモチベーションがあります。相補的な2種類の活動に現在携わっています。 このような活動を一緒にやってみたい学生さんは、配属とは無関係に歓迎です。 また、例えばサイエンスコミュニケータプログラムの学生さんが、 教材開発やワークショップなどの実践を通じた卒業研究ができないだろうかとも考えています。